この画像は
SNS等でやや流行した、統合失調症の症状の一つを説明した医学書の一コマ
・・・を、私が真似して作った画像である。(著作権を気にしたので。)
シンプルな線で一般化された「人物」が真顔で
「今日は晴れですね。晴れといえば、来月は僕の誕生日だけど、君はお肉が好き?」
という、額面通り支離滅裂な発言をしている絵面が可笑しい、ということで流行したそうだ。
ところがこの「支離滅裂な思考・発言」、私には取り立てて支離滅裂だとは思えなかった。
すなわち、画像で話す「人物」の言いたいことはこのようなことではなかろうか。
「今日は晴れですね。晴れといえば
(誕生日も「晴れの日」って言うよね。ちなみに)、
僕の誕生日は来月だけど、君はお肉が好き?
(というのも実は、僕の誕生日会にぜひ来てほしくって、君の好きな料理を用意しようと思うんだ。)」
・・・「人物」はつまり、そういうことを、「人物」の向かい側にいる「相手」に伝えたかったのではないだろうか。
自分から自分の誕生日会のことを切り出すには、差しさわりの無い天気の話から始めたかった。
わざわざ肉が好きかどうかを尋ねたのは、「相手」が好きな料理を知りたかったから。
なぜ好きな料理を知りたかったのかといえば、「人物」は、来てほしかったから。「相手」に。
・・・と、このような捕捉を入れると、少なくとも「人物」の「思考」は、支離滅裂ではなくなるのではないだろうか。
しかし、「人物」はその捕捉を「相手」に任せてしまったため、結果として「発言」は支離滅裂になってしまったと、私は推測した。あわれなことに、「人物」は言葉が足りなかったために、「相手」を誕生日会に誘えなかったばかりか、「支離滅裂な思考・発言」をするヤツだと思われてしまったのだ。
実はこのような経験、身に覚えがある人もいるのではなかろうか。私はある。
つい先日のこと。
身内に不幸があり、私をはじめとした親族は悲しみと手続きに追われて疲労困憊だった。
そこで私は、やはりひどく疲れていた様子の母にこう言った。
「お葬式だから、甘酒飲む?」
母はそれを聞いて「え?なんで?」と言った。意味が分からなかったらしい。そして私は母が意味が分からなかった意味が分からなかったので、「え?なんで、なんで?」と言い返し、そのときに自分の発言から思考が伝わっていなかったことに気が付いた。
先述の通りに、お葬式では親族が悲しみと手続きで疲労困憊になる。
とにかく事が急速に進むので、食事もまともにとれなくなる。しかし、体力を消耗しているのに食事をとらなければ、今度は遺族が逝くことになりかねない。
そこで私は、すぐに摂取できてなおかつ栄養豊富、さらに空腹も紛れる食品はないかと考えた。
そのとき頭に浮かんだのが甘酒である。コメ(麹)に由来する甘酒は高機能栄養食品として一躍知られるようになり、多くのスーパーでも販売されるようになった。お葬式で多忙な時に甘酒を飲めば、みんなの疲労が和らぐのでは、と私は考えた末に、
「お葬式だから、
(みんな慌ただしくて食事もとれずに疲れてると思うんだけど、
甘酒ってすぐ買ってこれて簡単に栄養補給できるから、)
甘酒飲む?」
と、赤い文字の部分をすっとばして母に尋ねてしまったのだ。改めて考えれば、こんな「思考の説明をすっとばした発言」は支離滅裂ととらえられてもしかたがない。
支離滅裂な思考をする人間なんて、実はほとんどいない。みんな自分の中では理路整然とした思考をしているつもりだ。
ただし、思考の説明をすっとばした発言をする人は少なからず存在し、そのような人の発言が相手には「支離滅裂」にとらえられてしまうんだろうな
・・・と、私は思った。
甘酒は、疲れた体によく染みた。
コメントをお書きください