私は趣味で漫画を描いている。
しかし趣味と言えども一生懸命に描いた作品をたくさんの人に見てもらい、称賛を浴びたいと思うのは人間であれば当然である。
(たまにこの報酬系が機能せずただ作品を作るだけで幸福だという者が存在し、たちどころに現人神の称号をさらっていく。)
メディアツールを使えば多くの人々に作品を公開することができるが、情報過多の昨今では他人の描いたウェブマンガなど滅多に目に留まらない。そのため、素人と言えどツイッターやLINEで広告を打たねばならない。
では、実際なんと広告しようか。伝えたいことをとりあえず3つに絞る。
①漫画を描いたこと
②それを読んでほしいこと
③漫画を描いたことをほめてほしいこと
この3つを踏まえて広告文句をつづる。
「漫画を描きました!読んでいただけると嬉しいです!感想お待ちしています!」
ここで表題にたどり着く。
「読んでいただけると嬉しいです」とは、果たして意味のある言葉だろうか。
読んでもらえれば、私は嬉しい。
しかし、私が嬉しいことが、読んだ人に何のメリットがあろうか。
他人を喜ばせることが生きがいというボランティア精神を持つ人間ならともかく、赤の他人である私を嬉しがらせて喜ぶ人間はなかなかいない。
私が目を見張る美人であれば喜ぶ顔を見せるだけで満たされる人々もあろうが、残念ながら私は寝不足の猫のようなへちゃむくれの男であるから、喜ぶ顔を見せても大勢にメリットが無い。
そう、メリットだ。
広告には受け手に対してメリットのある情報を入れこまなければならない。
では、受け手が(私の)漫画を読むメリットとは一体何だろうか。
思い当たるものを羅列する。
A. 無料なので、暇をつぶす時間に費やすコストが減る
B. わくわくしたり感動したり、普段考えないことについて考える機会を得たりする可能性がある
C. 生産性のない活動を目の当たりにすることで相対的に自信が付く
Cは最もありそうではあるが卑屈なので広告に使うと見る者の士気を下げる。
Aは無料という実感しやすいメリットを指してはいるものの、無料だからといって自分に無益な時間を使うことは憚られる。つまらない漫画を読むくらいなら畳の目を数える方が有益という人もいるだろう。
つまるところ漫画によって与えることができる汎用的な価値というのは「おもしろい」かどうかにかかっている。
ということは、広告で伝えて意味があるのは「(私の)漫画を読むことで興奮や感動を覚え、鋭気を養ったり嫌な思い出を精算したりする機会を得る可能性がある」というメリットだけだ。
私が描いた漫画が絶対におもしろくないとは言えない。世の中には畳の目を数えておもしろいという人がいるから、私の漫画をおもしろいと感じる人間もいないとは言えない。
したがって、受け手にメリットを与える作品の広告とはこれではなかろうか。
「漫画を描きました!あなたが読むとおもしろく、明日を生きる希望につながる可能性があります!感想お待ちしています!」
つまんなそう。
さて、最近私は描いた漫画をジャンプルーキーという漫画投稿サイトに自主掲載しました。
感情の無い少女が花言葉の力を用いて幽霊を発破するという痛快アクションです。
あなたが読むとすこし眉をひそめ、次第に息を呑み、読後に得も言われぬもの欲しさを感じる可能性があります。
感想お待ちしています。
カレオバナ - ジャンプルーキー!
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